これまでは「サラリーマン」という一つの大きな箱にすべてを詰め込んできましたが、これからは「機能(ジョブ)」で動く領域と、「関係性(コミュニティ)」で動く領域に再編されていくでしょう。
「ジョブ型」が加速する:知の探索と専門性の領域
ITエンジニア、データサイエンティスト、法務・会計の専門職といった職種は、ジョブ型への移行が最もスムーズに進みます。これらの職種に共通するのは、成果の源泉が「組織内での立ち回り」ではなく「外部市場でも通用する客観的なスキル」にある点です。
特に変化の激しいテック業界などの「知の探索」が求められる業種では、固定された組織に長く留まることよりも、多様なプロジェクトを渡り歩いてスキルを研磨する方が、個人にとっても企業にとっても合理的になります。ここでは「会社への忠誠」よりも、その時々の「ミッションへのコミットメント」が契約の核となります。
「帰属意識」が不可欠となる:暗黙知と信頼の領域
一方で、ジョブ型だけでは立ち行かない領域も確実に残ります。それは、長期的な信頼関係が価値を生むサービス業や、複雑な調整が必要な製造業の現場、あるいは企業の独自文化を継承するコアメンバーです。
例えば、地域のインフラを支える保守業務や、長年かけて顧客との信頼を築く対面営業、また「このチームだからこそ生まれる一体感」が競争力になるクリエイティブな開発チームなどは、メンバーの離職率が高いジョブ型ではかえって効率が落ちてしまいます。
こうした現場では、マニュアル化できない「暗黙知」の共有が重要であり、それは「この組織の一員として長く貢献したい」という帰属意識や心理的安全性が担保されて初めて成立するものです。
二極化の先にある「ハイブリッド型」の生存戦略
この仮説が進展した先では、一つの企業の中に「ジョブ型のプロフェッショナル層」と「メンバーシップ型のコア層」が混在する構造が一般的になると予想されます。
- 企業側の視点: どの業務を「外から買う(ジョブ型)」か、どの業務を「中で育てる(帰属意識型)」かという戦略的選別が問われます。
- 個人側の視点: 自分が「特定のスキルで勝負する職人(ジョブ型)」として生きるのか、それとも「組織の文脈を理解し、チームを動かす結節点(帰属意識型)」として生きるのか、というキャリアの選択を迫られることになります。
結局のところ、ジョブ型が広まるほど、皮肉にも「ジョブ型では代替できない、組織特有の人間関係や文化」の価値が逆説的に高まっていくのではないでしょうか。


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